こんにちは!
公認会計士・クリエイター特化税理士の三橋裕樹です!
「これって経費になりますよね?」
顧問先やスポット相談のクリエイターさんからこう聞かれたとき、
正直に言うと「それは難しいですよ」と答えることが少なくありません。
本人はちゃんと調べて、納得して、経費にしようとしている。
でも税務上はアウト、というケースが思いのほか多いんです。
これは税務の知識が足りないというより、人間が持っている認知の癖から来ていることがほとんどなので、
この記事ではその話を分かりやすく整理してみます!
「経費にしたい」と思った瞬間から、理由を探し始める
経費の判断で一番やっかいなのは、「これを経費にしたい」という気持ちが先にあると、
無意識にその結論を支える理由を探し始めてしまうことです。
これは、心理学では「確証バイアス」と呼ばれる現象で、
自分の考えや希望に合う情報だけを集めて、反対意見の情報を無視してしまう傾向のことを指します。
たとえばこんな経験、ありませんか?
- 趣味の映画鑑賞をした後に「これはインプットだから経費にできる」と思った
- 気に入った服を買って「配信で着るから経費にしよう」と決めた
- 家族旅行を計画しながら「取材も兼ねればいいか」と考えた
どれも「先に行動や欲求があって、後から経費の理由をつけている」パターンです。
仕事との関係を考えてから買うのではなく、買ってから仕事との関係を考えているんですよね。
もちろん「お仕事に必要だった」といえる実態があればそれでも問題ありませんが、
自分ひとりでは客観的な判断ができなくなることって結構多いです。
本やネットで調べるときも、都合のいい情報を探す
「本やネットで経費になるか調べてから判断してる」という方も多いと思いますが、
じつはここにも落とし穴があります。
たとえばネットで、
「○○ 経費になる」で検索すると、経費になるケースを紹介してる記事が上位に来やすく、
「○○ 経費にならない」で検索すると、経費にならないケースの記事が出てきやすくなる。
つまり、どちらのキーワードで検索するかだけで、たどり着く答えが変わってしまうんですよね。
書籍も同じで、
- 「フリーランスの経費術」
- 「税理士が教えてくれない節税術」
- 「〇〇を全部経費にする方法」
こういった魅力的な本は、お堅い専門書に比べて手に取りやすく、
その本に記載されている内容を都合よく解釈して、自分に当てはめてしまうことが意外と多いです。
そのため、客観的な情報をもとに判断していると思っていても、
その情報を選ぶ過程で自分にとって都合のいいものを選んでしまってる可能性が結構あります。
よくある「都合のいい理由」の具体例
クリエイターさんが、ついグレーな出費を経費に入れてしまうときの典型的な理由を紹介してみます。
1.「インプットだから」
映画、ゲーム、漫画、旅行…
「クリエイターとしてのインプットに必要だから」という理由で経費にするパターンはとても多いです。
インプットが仕事に役立つのは事実ですが、「すべて経費になる」かは別の話。
税務上は「その支出が売上を得るために直接必要だったか」が問われます。
2.「いつか使うかも」
習い事、舞台・演劇・コンサート鑑賞…
「いつかこの経験が作品に活きるかもしれない」という理由で経費にするパターンも多いです。
たしかに潜在的にインスピレーションになりえる可能性はありますが、
客観的に「仕事に必要だった」と言えないと、経費計上は認められません。
3.「プロとして必要」
美容代、服代、健康維持のためのジム代…
「職業柄、見た目や体調を整えるのは必要なこと」という理由で経費に計上する人もいます。
ただ、こういうことは仕事をしていない人でも必要とする支出なので、
「その仕事をしているから必要な経費」とは説明できません。
4.「みんなやってるから」
SNSや仲間から「これも経費にできるよ」と聞くと、根拠を確認せずに経費にしてしまいがち。
他の人が経費にしていても、それが正しい処理とは限りません。
わたしもクリエイターさんを応援したい気持ちが強いので、
1~3の理由は「分かります、分かります」と言いたいんですが、
それでも客観的な視点で見ると、経費と言える根拠が乏しいんですよね…。
自分の判断が正しいか確認するための問い
じつは自分の判断が正しいかどうかを確認するためのシンプルな問いがありまして、
それはたったこれだけです👇
「税務調査官が隣に座っていても、同じ説明ができるか?」
たとえば、
- 「インプットだから経費にしました」
- 「プロとして必要だから」
- 「なんとなく仕事に関係あると思って」
こういった説明だけでは、税務調査官が経費として認めてくれる可能性は低いです。
逆に言えば、
- 「○月○日の撮影のために買いました」
- 「このクライアントとの打ち合わせで使いました」
- 「このコンテンツの素材として使用しました」
と説明できるなら経費として認めてもらえる可能性が高く、自信をもって経費にして大丈夫!
経費にするかどうか迷ったとき、それっぽい言い訳をつくってしまいがちですが、
この問いを一度自分に投げかけてみることで、冷静に判断をする軸を持つようにしましょう。
「グレーを白と思い込む」ことのリスク
ちょっと意地悪な話ばかりしてしまいましたが、
経費をきちんと計上して節税することは、自分のビジネスを守ることでもあります。
ただ、グレーな支出を「これは白のはず」と思い込んで経費にし続けることは、
節税ではなく脱税への第一歩になりえます。
税務調査は「いっぱい稼いでる人や、怪しいビジネスをしてる人だけが対象」というわけではありません。
申告内容に不自然な点があれば、誰にでも来る可能性があります。
そのとき「なぜこれを経費にしたか」を説明できない支出が積み重なっていると、
まとめて否認されることで多くの税金・ペナルティを課されて、事業が一気に傾くリスクがあります。
自分を守るために、むしろ少し厳しめの基準を持っておくほうが、長期的には得だと思っておきましょう。
Q&A:経費判断に関するよくある疑問
Q. 経費にしすぎると税務調査が来やすくなりますか?
A. 経費の割合が極端に高い場合や、毎年赤字が続く場合は、税務署に目を付けられやすくなります。
ただし適切な根拠があれば問題ありません。
「経費を減らすべき」ではなく「説明できる経費を漏れなく計上する」という姿勢が大事です。
Q. 過去の経費判断が正直怪しいです…。どうすればいいでしょうか?
A. その影響が多額なら、修正申告という形で自主的に訂正することでペナルティを最小限に抑えられます。
もし判断に迷うときは、税理士に相談することをおすすめします。
Q. 「経費になるかどうか」をネットで検索して信じるのはリスキーですか?
A. どのビジネスでも発生する典型的な経費であれば、問題ないことがほとんどです。
ただ、クリエイター業の場合には趣味っぽく見られやすい支出でも経費になる余地があるので、
それが逆に、都合のいい解釈を生みやすいというリスクがあります。
判断に迷うときは適当に処理せず、税理士に相談してみることも検討してみてください。
まとめ:自分の判断を疑う習慣が、自分を守る
- 「経費にしたい」という気持ちが先にあると、理由を後付けしやすい
- ネットや書籍の情報も、都合のいいものを探しに行く性質がある
- 「税務調査官に説明できるか」が判断の基準
- グレーな出費を白と思い込むことは、脱税への第一歩になりえる
- 少し厳しめの基準を持つほうが、長期的には自分を守ることになる
経費の判断は、知識だけでなく「自分のバイアスに気づけるかどうか」に大きく影響を受けます。
「これは本当に仕事のために必要だったか?」という問いを、
一度立ち止まって考える習慣をつけてみてください。

