収入が不安定になりやすい作家、作曲家を守る平均課税制度

税務関連

作家や作曲家は作品が完成するタイミングにより収入が大きく変動しやすい業種です。

ある年に多額の報酬を受け取ることで生計のバランスを取ろうとしても、所得税は超過累進税率により暦年単位課税されることから毎年平均的に稼いだ場合に比べて割高の税負担となってしまいます。

これでは本業に集中して生計を維持するのが難しいですよね。

そんな苦悩から作家、作曲家を守るための「平均課税制度(変動所得)」をご存知でしょうか。

平均課税制度とは

平均課税制度とは、その年の状況により収入(所得)が大きく変動することが予想される一部の業種について課税を緩和してくれる制度です。

平均課税制度を利用するためには、所得税法上に限定列挙されたもののみ該当する変動所得か、3年分の契約金等を一括して収受するような場合の臨時所得に該当する必要があります。

それぞれの概要は以下のとおり。

変動所得

所得税法上に限定列挙されている以下の所得が該当します。

  • 漁獲又はのりの採取から生じる所得
  • はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝もしくは真珠(真珠貝含む)の養殖から生じる所得
  • 原稿もしくは作曲の報酬にかかる所得
  • 著作権の使用料にかかる所得

つまり作家・作曲家として活動されている方であれば該当します。

一点注意がありまして、講演料・特許権の使用料にかかる所得は変動所得に該当しません。

臨時所得

こちらは限定列挙ではなく、以下のような例示に類似する所得でも該当します。

  • プロスポーツ選手の契約金など、3年以上同じチームに専属して役務を提供する際に収受する、年間報酬の概ね2倍以上の一時金
  • 土地や建物を3年以上貸し付ける場合に一括して収受する、2年分の賃借料合計額を超える契約金等
  • 業務を廃止した場合や、業務に用いる資産が災害により被害を受けた場合などに、その業務にかかる所得3年分以上の補償として受け取る収入

これに類似する収入であれば、どの職種であっても平均課税制度の対象となり得ます。

補足:青色申告特別控除がある場合

今やほとんどの個人事業主が青色申告かと思います。

青色申告特別控除がある場合には、変動所得・臨時所得に以下の調整計算を行う必要があります。

具体例としては以下のとおりです。

事業所得:3,500,000円(うち、2,700,000円が変動所得)

青色申告特別控除:100,000円

100,000円 × 2,700,000円/(3,500,000円+100,000円)= 75,000円

この75,000円を変動所得から控除して、2,625,000円がこれより先の計算で使用する変動所得となります。

平均課税制度の適用要件

変動所得もしくは臨時所得に該当する場合であっても直ちに平均課税制度が適用できる訳ではありません。

以下の要件に該当することが必要となります。

その年に変動所得だけある場合

基本的に作家・作曲家として活動されている方はこちらに該当するでしょう。

  1. その年の変動所得の金額 > (前年、前々年の変動所得合計)× 1/2
  2. その年の変動所得の金額 ≧ その年の総所得金額 × 20%

上記1,2のいずれにも該当する場合に平均課税制度が適用できます。

その年に臨時所得だけある場合

この場合は、以下の条件に該当すれば平均課税制度が適用できます。

  • その年の臨時所得の金額 ≧ その年の総所得金額 × 20%

その年に変動所得・臨時所得いずれもある場合

以下いずれかの方法で判定を行います。

判定方法その1
  1. その年の変動所得の金額 > (前年、前々年の変動所得合計) × 1/2
  2. その年の変動所得+臨時所得の合計額 ≧ その年の総所得金額 × 20%

上記1,2のいずれにも該当する場合に平均課税制度が適用できます。

こちらは変動所得が判定の軸になりますね。

判定方法その2
  1. その年の変動所得の金額  (前年、前々年の変動所得合計) × 1/2
  2. その年の臨時所得の金額 ≧ その年の総所得金額 × 20%

こちらは臨時所得が判定の軸となっています。

平均課税制度適用時の税額計算

平均課税制度を適用した場合の税額計算は少し複雑で、ステップを踏んで計算する必要があります。

  1. 平均課税対象金額を計算
  2. 課税総所得金額を調整所得金額特別所得金額に区分
  3. 区分したそれぞれに税率を乗じて所得税額を計算

内容を見ていきましょう。

1.平均課税対象金額を計算

平均課税対象金額とは、文字通り平均課税制度の対象となる金額のことを指します。

計算方法は以下のとおり。

前年分又は前々年分に変動所得がある場合

{その年の変動所得の金額 - (前年及び前々年の変動所得の合計額) × 1/2}+ その年の臨時所得の金額

直近2年の平均変動所得額を超過した金額に、臨時所得を合計するということですね。

前年分又は前々年分に変動所得がない場合

その年の変動所得 + その年の臨時所得

こちらの場合は、その年の変動所得全額が対象となります。

 

2.課税総所得金額を調整所得金額と特別所得金額に区分

それぞれの区分(計算)方法は以下のとおり。

調整所得金額

【課税総所得金額>平均課税対象金額の場合】

課税総所得金額 - 平均課税対象金額 × 4/5

 

【課税総所得金額≦平均課税対象金額の場合】

課税総所得金額 × 1/5

特別所得金額

課税総所得金額 - 調整所得金額

 

3.区分したそれぞれに税率を乗じて所得税額を計算

2で区分したそれぞれに税率を乗じ、その後それぞれの税額を合算することで税額が算定されます。

調整所得金額の税額計算

調整所得金額 × 超過累進税率

 

特別所得金額の税額計算

特別所得金額 × 平均税率(※)

平均税率とは、調整所得金額を用いて自ら計算する税率のことを言います。

計算式は以下のとおり。

調整所得金額に対する税額 ÷ 調整所得金額 =  0.・・・(小数点2位未満切捨)

これだけ見ると、調整所得金額の税率と同じように感じるかも知れませんが、式を見て頂くと分かるとおり超過累進税率ではありませんので、こちらの金額が多ければ多いほど通常の税額計算と比較して税負担が軽くなります。

 

上記の結果算定された所得税額を合算すると、その年の所得税額(税額控除前)が算定されることになります。

最後は「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」に計算内容を記載

基本的な計算は上記のとおりです。

見てきた通りに計算するだけでもなかなか大変なのですが、平均課税制度を適用するためには上記の計算内容を「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」に記載する必要があります。

実際に制度を利用する場合には、税務署発行の変動所得・臨時所得の説明書を参考にしましょう。

手間はかかりますが、要件に該当すれば合法的に大きく税負担を減らすことができますので、ぜひ検討してみてください!

 

◆余談

今日は朝から夜まで打ち合わせ続きでした。なんだか懐かしい感覚です。

久しぶりに襟付きのワイシャツを着ました。2月頃完成した春・夏用のオーダーシャツに初めて袖を通しましたが、想像以上にフィットして着心地が良いですね。オン・オフ両方使える形で作って正解でした。

近場にあったのに一回も行った事のないカフェに行きました。コロナの影響なのかも知れませんが、店内がザワザワしておらず良い感じ。

アズレンは永遠の3-4周回。赤城さんはまだ落ちませんが、代わりに加賀さんが4回落ちました…。