【経営支援】棚卸資産の滞留が会社を殺す?

融資・経営支援

こんにちは、公認会計士・税理士の三橋裕樹です!

棚卸資産といえば、商品・製品・仕掛品・原材料といった、キャッシュを生み出すための大切なモノですよね。

メーカーを例に出すと分かりやすいと思うのですが、

①まず部材を仕入れる

②部材を工程に投下する

③製造が行われる

④納品、検収後に入金

在庫を抱える会社はこのような流れでお金を手に入れます。

そのため、お客様から注文があった時に一刻も早く納品できるよう安定在庫を保有するメーカーも少なくないでしょう。

しかし、そういった保有在庫が膨らみ過ぎると、会社経営を圧迫する要因になることをご存知でしたか?

棚卸資産が「売れずに残っている」ことの意味を、キャッシュの側面で考えてみましょう!

棚卸資産の滞留とキャッシュの関係

私が監査法人に入って一年目の頃、

パートナーがある会社の財務諸表を見て「まるで倒産間近の会社みたいだな」と呟きました。

どうやらそのパートナは年々膨らんでいく在庫金額が気になったそう。

会計上は一定のルールに基づいて滞留した在庫に対する評価損が計上されていますし、

正味売却価値との比較による低価法も実施されている。

何が問題なのか。

 

結論から話しますと、

マズいのは棚卸資産が滞留するということはその分だけキャッシュの回収ができていないということです。

冒頭で述べたとおり、棚卸資産が増加するということは、その分だけお金を払って部材を仕入れていることになります。

そう、棚卸資産はお金を払った後に手に入るんです。

ということは、今後売上を獲得するための先行投資として仕入れた部材が売れないのであれば、

いつまで経ってもお金を回収できないことになってしまいます。

資金繰りが厳しい企業の場合、これはかなり問題ですよね…。

支出と収入には時間差がある

上記の例に限らず、在庫を抱えてビジネスする場合、まず仕入れが発生しますよね。

その仕入れによって納品準備在庫を確保してから売上獲得に至る訳ですが、

掛販売の場合には実際にお金が入金されるのは売上を計上した月の翌月末以降になることが多いのではないでしょうか。

これが商社のように「買ってきたものを売る」ビジネスであればマシなのですが、

メーカーのように部材を仕入れてから完成までに数か月かかるようなビジネスの場合、仕入代金を払った数ヶ月後に売上入金が発生するなんてザラです。

このような状況下で会社手元資金がない場合、給料・光熱費・税金を支払うこともできないため、

利益が出ていても倒産する黒字倒産なんて話にもなりかねません…。

もちろん現実の会社には財務部があるため、手元資金に不安を感じた場合には銀行借入を実行して乗り切るでしょうが、借入に比例して支払利息による支出も増加します。

会社としては後々回収するつもりで棚卸資産を積み上げても売れるまではお金を回収できませんし、その状況が続くのであれば本来なら払う必要のない利息を払うことになります。

さらに自社工場のキャパを超えて在庫が多量になった場合、抱えている在庫とは別の注文が発生した時に製造に着手するスピードが鈍化しますし、倉庫保管料が増加していく可能性もありますよね。

つまり、在庫を積み上げるということは資金繰りを悪化させることに直結します。

これを知っているからパートナーは「倒産間近の会社みたい」と考えた訳ですね…。

会計利益と資金繰りは別の話

ちなみに前述の会社は手元資金が豊富にあったため倒産なんて話には全くなりませんでした。

しかし、棚卸資産の滞留は黒字倒産の話と本質的につながっています。

つまり会計上で利益を計上していても資金繰りが悪化すれば会社は潰れてしまいます。

今回は棚卸資産に焦点を当てましたが、滞留債権にも同じことが言えますよね。

会社が意図した通りに入金が行われてないということは、資金繰りを悪化させる要因になります。

会社がどれだけ適切に会計処理をしても、債権を回収できないことにはお金が増えませんからね。

会計マジックで「うち儲かってるじゃん♪」なんて勘違いしないよう、ご留意くださいね!

会計顧問(企業様向け)