法人・個人ともに2期前の売上が1,000万円を超えていると、消費税の納税義務が発生することになります。
消費税の計算が想像以上に煩雑なこともあり、消費税の納税義務が発生したタイミングで税理士と契約をするなんてことも少なくないでしょう。
自分が請求する売上にかかる消費税を集計することは割と楽なんですが、経費側の消費税区分を判定することってなかなかハードルが高いですよね。
そんな消費税計算・申告の手間を軽減してくれる強力な助っ人として、簡易課税制度というものがあります。
簡易課税制度とは
簡易課税制度とは、支払った消費税額を簡易的な方法で計算させてくれる制度の事を言います。
一旦、消費税額の基本的な計算方法を確認しましょう。
預かった消費税(売上に含まれている消費税) ー 払った消費税(経費に含まれている消費税)
※理解重視のため、貸倒、返品、値引等の調整項目は考慮してません。
凄い極端な例ですが、
消費税を一律10%と仮定して、220円の売上、110円の経費があった場合、
確定申告で納めるべき消費税額は10円となりますよね。
こんな簡単であれば良いのですが、実務上は「払った消費税」を計算するのがなかなか大変だったりします。
そこで検討する余地があるのが簡易課税制度!
簡易課税制度を適用した場合には、以下の計算式を用いて確定申告で納めるべき消費税額を計算します。
預かった消費税(売上に含まれている消費税) ー (預かった消費税 × みなし仕入率)
※理解重視のため、貸倒、返品、値引等の調整項目は考慮してません。
つまり、「預かった消費税」と、適用する「みなし仕入率」(後述)さえ分かれば簡単に計算が可能ということです。
「へー、そうなんだ」程度にしか思わないかも知れませんが、一部の事業者様にとってはかなりオイシイ制度だったりします。
簡易課税制度のメリット
何よりも大きなメリットは、実際に払った消費税額を無視して計算することが可能ということ。
具体的に説明をしますね。
まず、「みなし仕入率」ですが、国税庁のタックスアンサーにも掲載されている以下の割合のことを指します。
これは、支払った経費に含まれる消費税額を実際に計算すると、売上にかかる消費税に対してだいだいこれくらいの割合になるでしょうという決め打ちの仕入率です。
見て分かるとおり、利益率が高くなる傾向のある業種ほど「みなし仕入率」が低いですよね。
…ここで鋭い人は気付いたかも知れません。
つまり、ザックリ計算してみて売上に対する経費の割合が「みなし仕入率」よりも低い場合、簡易課税制度を使えば確定申告で納めるべき消費税額が安くなる可能性が高いです。
実際のところ、サービス業を営まれている事業者様は、売上に対して経費割合がかなり少ないなんてことが珍しくありません。
私のお客様にもイラストレーター、作曲家等、「みなし仕入率」の判定においてサービス業に区分される方がいますが、売上に対する経費の割合が2~3割だったりします。モノを仕入れて売る、というビジネスモデルではないので仕方ないですよね。
そのような場合に簡易課税制度を適用すれば、追加の支出なしに消費税を数十万節税できることになります。
これは大きなメリットでしょう。
また、原則の計算方法によると、実際に支払った消費税をマイナスする(仕入税額控除といいます。)ためには、消費税額の記載がある証憑を保管する必要があります。
(詳細はこちらの記事をご参照ください。)
一方、簡易課税制度を適用する場合は仕入税額控除を使わないため、カードの明細だけしかないような場合でも簡易的な計算で消費税額をマイナスすることができます。
税理士が関与していない個人事業主様の多くは、カードの明細しか残していないことが多いので、これもメリットと言えるでしょう。
簡易課税制度を適用するためには
以下2つの要件をいずれも満たすことが必要になります。
- 基準期間(2期前)の課税売上高が5,000万円以下
- 簡易課税制度を適用したい年・事業年度が始まる前日までに「簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署長に提出
一つ目の要件ですが、簡易課税制度を適用したい年ではなく、消費税の納税義務の判定に用いる基準期間(2期前)が金額要件の対象となっていることにご留意ください。
二つ目の要件ですが、期日に気を付けてください。例えば個人事業主が2022年から簡易課税制度を適用する場合、2021年末日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
なお、簡易課税制度は一度適用すると、2年間は継続が強制されますので、金額の大きい設備投資等を検討されている場合には注意が必要です。
実際にはシミュレーションして検討
簡易課税制度を適用することのメリットを記載しましたが、原則的な計算でより消費税が安く済むのであればその方が良いですよね。
そのため、実務的には原則計算(これも複数ありますが)・簡易課税制度のどちらを利用した方が計算を行って選択適用することになります。
原則的な計算を自分でやるのは難しいですが、記事中に書いた通り、売上に対する経費割合が「みなし仕入率」よりも低い場合には積極的に簡易課税制度の適用を検討しましょう!
◆余談
仕事の資料作成を自宅でやっていたのですがどうにも集中が続かず、久しぶりに外で作業しました。まだまだコロナの脅威がありますが、たまに外で作業すると捗ります。
夜の雨音は気持ちが落ち着きます。受験生時代は雨の音を作業用BGMにしてました。懐かしい…!
今朝は航空券絡みのトラブルがあったのですが、代理店ではなく航空会社に直接連絡したら建設的な提案を提示してくれました。海外の航空会社で一度ひどい目にあっていますが、日本の航空会社は本当に素晴らしいと思います。