法人成りを考えるときに忘れちゃいけない生活費と役員報酬の兼ね合い

税務関連

こんにちは!
クリエイター特化税理士の三橋裕樹です!

所得(利益)が伸びてくると
考えたいのが法人成り。

個人事業主の利益に課される所得税は

所得が一定水準を超えるたびに
超過分の税率が高くなります。

いわゆる超過累進課税というやつですね!

これに対して法人税は
ある程度までは税率が一定なので

所得によっては
法人成りをしたほうが全体としての支出が減る」

こんな話を耳にしたことがある方は多いでしょう。

でも節税に意識が向きすぎて
生活費と役員報酬の兼ね合いをすっ飛ばしてしまう方がいます…。

役員報酬で調整できる社会保険料

法人成りをするときに
税金と同じくらい重要なのが社会保険料!

個人事業主であれば
国民年金、国民健康保険に加入することになります。

このうち国民年金は毎月の支払額が
一律に決め打ちされてますけど

国民健康保険は
前年の所得金額をもとに支払額が決定。

そのため個人事業主の場合は
思い通りの社会保険料額に設定するのがちょっと大変…。

前年に所得金額を調整しなきゃいけないですからね…。

(文美とかは置いといて。)

 

一方、法人成りをすると

役員報酬として設定した額によって
支払う社会保険料額が決まるので

自分で社会保険料額を設定できるということ!

例)役員報酬をできる限り低くして
社会保険料額をミニマムに抑える、など

なので節税だけを意図した法人成りでは

社会保険料、法人税、所得税、住民税を総合して
一番支出が少なくなる役員報酬額に設定されることが多いです。

その役員報酬で生活できる?

上に書いたとおり
役員報酬をかなり低めに設定することで

社会保険料額をミニマムにできて
所得税・住民税を減らせるというのは仰るとおり!

ただこのやり方を想定するときって
役員報酬を100~200万円くらいに設定することが多いんですけど

法人成りすることにより
節税を考えるような所得水準の方で

年間の額面収入が200万円弱で
暮らせる人ってどれくらいいるんでしょう?

200万円でも毎月額面17万円弱。
ここから所得税、住民税、社会保険料が控除され

手取りのお金から
生活費を払っていかなければなりません…。

もともと所得が300万円くらいの人だとしたら
単純計算で25万円の月収なのに

そこから8万円も減るって致命的じゃないですか?

役員貸付金は金融機関の天敵

役員報酬を低くし過ぎて生活費が足りなくなったら
どうすれば良いかと言うと

  • 役員報酬を上げる
  • 事前確定届出給与(役員賞与)を払う
  • 会社からお金を借りる

基本的にはこのどれかになります。

 

役員報酬については
期首から3か月以内に決定した金額から増加すると

上乗せ分については経費として認められないので
望んで選択する人は少ないでしょう。

 

事前確定届出給与(役員賞与)は
事前に届出さえできれば使い勝手が良いですけど

その分個人の所得税・住民税の増額についても
影響を考慮しなければいけません…。

 

残る方法は
会社から借入を行うこと。

ただこれって、金融機関から見ると
すっごく印象が悪いです。

会社のお金を役員に横流ししてるわけですからね…。

しかもその理由が
役員報酬を低くし過ぎたことによるものであれば

お金を借りようとしても
「社長に横流しするでしょ」とみられる可能性が高いです。

また、お金を個人に貸し付けるなら
その分の利息を取らなきゃいけません。

融資を受けるつもりがないなら
選択肢の一つとして考えても良いかも知れませんが

いずれにせよ、あるべきやり方じゃないですよね…。

生活できる水準で役員報酬を決める

個人事業主から法人成りすることで
規程を設けて手当を支給したり

自分の人件費を経費にしたり
社会保険料を調整しやすい

などなど、メリットは確かに多いですけど

節税に意識を向け過ぎると
今までの通りの生活をすることが難しくなります。

なので原則としては今の生活水準をもとに
必要となる収入額を算定してから役員報酬のイメージを決めて

その役員報酬額で法人成りしても
節税になりえるのかを考えるようにしましょう!

 

◆新しいこと

ある申請書の作成。