【経営支援】事業継続力強化計画の認定制度が開始!

融資・経営支援

こんにちは、公認会計士・税理士の三橋裕樹です!

先日、中小企業庁主催の中小企業強靭化対策シンポジウムに参加してきました!

なんか厳かな響きですね、強靭化って…笑

 

そもそもこれは何のシンポジウムなのかというと

中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律

(通称「中小企業強靱化法」)

これが2019年7月16日に施行されました。本当つい最近のことです。

そのため、これに関連するシンポジウムを開催して制度認知を向上し、より多くの中小企業にメリットを享受してもらおうという話です。

リンク先を読んで頂ければ色々書いてあるのですが、正直よう分からん状態ですよね笑

そこで今回はこの中小企業強靭化法の施行にともなう「事業継続力強化計画」認定制度を紹介します!

正直私もまだ勉強中なのですが、メリットを享受するためのポイントをサクっと押さえましょう!

中小企業強靭化法ってなに?

結論からお話すると、

大規模な自然災害に備えた計画を整備した中小企業に対して国が支援を手厚くする

という制度です。

趣旨は以下のとおり。

自然災害の頻発化や経営者の高齢化によって、多くの中小企業は、事業活動の継続が危ぶまれています。こうした状況を踏まえ、中小企業の事業活動の継続に資するため、中小企業の災害対応力を高めるとともに、円滑な事業承継を促進するため、「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案」(中小企業強靱化法案)により必要な措置を講じます。

中小企業庁のホームページより引用ー

まだまだ記憶に新しい東日本大震災。

あれほどの壊滅的な被害はなかったとしても、西日本における大量降雨による大規模洪水。

近年は今まで以上に自然災害が頻発しているように感じられます。

しかしながら、非常時の対策を万全にしている家庭・企業はまだまだ少ないことでしょう。

そのような状況のなか、大規模災害に被災した場合には事業継続が著しく困難になることは言うまでもありませんよね。

なので、中小企業・小規模事業者の方々が防災・減災に取り組むよう、

中小企業強靭化法を一部改正し「事業業継続力強化計画」認定制度を開始したという訳です。

「事業継続力強化計画」認定制度とは

その名のとおり、事業継続力強化計画を認定する制度です。

今回の制度が開始される以前から中小企業庁はBCP(事業継続計画)の策定を推進してきました。

ちなみにBCP(事業継続計画)の概要は以下のとおり。

BCP事業継続計画とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。

中小企業庁のホームページより引用

例として、自社工場だけで工程完結できるようなメーカーの場合。

仮に自社工場が被災してしまったら、お客様への供給が完全にストップしてしまいますよね…。

ファブレス企業のサプライヤーが被災した場合も同様の話です。

こうなってしまっては事業継続なんてできない…。

なので有事に備えて、既存サプライチェーンにおける依存度を把握し、

  • 代替先のリストアップ
  • 災害時の協力関係構築
  • 提携工場との相互支援提携

などなど、予め災害時の対応を整備する必要がありますよね。

このような計画書をBCP(事業継続計画)といいます。

今回の制度はそのBCP(事業継続計画)を策定のうえ経済産業省に申請し、認定された企業は多数のメリットが享受できるようになったというものです。

メリットの面でも、実効性の面でも、個人的にはアツイ制度だと思ってます!

認定されるメリット

ここで、実際に認定された場合のメリットを紹介します。

  • 日本政策金融公庫による低利融資
  • 信用保証枠の追加
  • 防災・減災設備への税制優遇
  • 補助金の優先採択
  • 認定ロゴマークの使用
  • 連携企業・団体からの支援

中小企業庁発行のパンフレット「中小企業の事業継続力の強化を応援します!」より抜粋

結構メリット大きくないですか!?(特に赤字の部分)

日本政策金融公庫による低利融資については、以下のとおりです。

また「事業継続力強化計画」の認定を受けるということは、本質的な意味で災害時の対応を考えている企業とみなされます。

そのため、認定ロゴマーク有するということは、信用力の付与という意味でも小規模事業者が受ける恩恵は大きいように思います。

申請方法は?

申請の流れは以下のとおり。

1.「事業継続力強化計画」の策定

中小企業庁ホームページに掲載の「策定の手引き」を参照し、事業継続力強化計画を策定します。

2.計画認定の申請

「事業継続力強化計画」を策定したら、管轄の各地方の経済産業局に提出します。

3.計画の開始、取り組みの実行

「事業継続力強化計画」が認定されると、経済産業局から認定通知が送付されます。

「事業継続力強化計画」の認定後は、当該計画に記載の項目を実際に実施します。

中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案

【中小企業強靱化法案】の概要より抜粋

「事業継続力強化計画」の策定方法

上記で見ると簡単に見えますが、実際に策定しようとすると結構大変そうです…。

「策定の手引き」を読んでみると、主に以下のステップを踏んで作成することが求められているよう。

  1. 事業継続力強化の目的の検討
  2. 災害リスクの確認・認識
  3. 初動対応の検討
  4. ヒト、モノ、カネ、情報への対応
  5. 平時の推進体制

1.事業継続力強化の目的の検討

まずはこの取組を行うことの目的把握です。

例示では、災害の際は以下の方々に広く影響を与える旨が記載されています。

  • 従業員やその家族
  • 顧客や取引先
  • 地域の方々

従業員を守るためなのか、事業活動を継続するためなのか、有事の際でもお客様に安定供給を続けるためなのか…

これらすべて大事なことであるのは間違いないのですが、

「私たちの会社でなぜBCPを作成し、実行する必要があるのか」を明確化することで、ロードマップ作りの基礎としましょうということですね!

2.災害リスクの確認・認識

自然災害が発生した際に、自社もしくは自社に影響を与える企業がどれほど影響を受けるのか把握する必要があります。

例示では、以下の観点でリスク認識する必要がある旨が記載されています。

  • ヒト(人員)
  • モノ(建物・設備・インフラ)
  • カネ(リスクファイナンス)
  • 情報

従業員が重症を負った場合、主要設備が破損した場合、運転資本が尽きた場合、得意先情報を紛失した場合…

などなど、被災してしまうと事業活動を継続するにあたって様々な問題点に直面することになりますので、予めリスクを想定して対応できるようにしましょうということです。

災害そのもののリスク認識の方法は、例としてハザードマップを活用した、地震の際の危険区域の把握や、河川が氾濫した際の洪水危険区域の把握が挙げられます。

シンポジウムでもこの辺りに焦点が当てられていたのは、

「ハザードマップ上安全だから大丈夫」は通用しないということ。

大量降雨による市街全体の洪水の場合にはライフラインも止まる訳ですし、潜在的なリスクをきちんと考えましょうということですね!

3.初動対応の検討

これは実際に被災してしまった場合に、まず何をするのか決めておこうということですね。

具体例としては以下が例示されています。

  1. 人命の安全確保
  2. 非常時の緊急時体制の構築
  3. 被害状況の把握・被害情報の共有

どれも当たり前の行動ですよね!

ただ、これも予め「初動対応はコレ!」というのを整備しておかない限り、「何をすればいいんだ!?」という混乱を招きかねません。

平時の際に策定をしておくことで、有事の際にも合理的かつ冷静に行動することが可能になるということでしょう。

4.ヒト、モノ、カネ、情報への対応

これは2と絡んでくる検討内容ですね!

認識したリスクにどう対応するのか。

例示としては以下が列挙されています。

  • 社員の多能工化を進める
  • 設備の耐震化
  • 保険の加入
  • バックアップデータの取得

シンポジウムでは東日本大震災で被災した会社の復活までの軌跡が紹介されていましたが、

そこで生命線となったのは過去のお客様の顧客リストが見つかったことでした。

どれだけ準備をしていても被災からの再起は非常に困難だと想定されますが、

リスク認識を持って普段から取り組むことで何もしてなかった時に比べたら大分マシをいかに作るかが大事ということですね。

5.平時の推進体制

どれだけ計画が素晴らしくても実行できなければ意味がないですよね!

そのため、避難経路の確保や初動対応の確認、データのバックアップなど、平時のうちにできることを繰り返し行っていくことが求められます。

手引き上の留意事項としては以下のとおり。

  1. 経営層の指揮の下、事業継続力強化計画の内容を実行すること(平時の推進体制に経営陣が関与すること)
  2. 年に一回以上の訓練を実施すること、そして取組内容の見直しを定期的に実施すること

これについてシンポジウムで熱く語られていたのは、

経営者自ら本気度を示さないと、職員には確実に浸透しないということです。

仮に経営者が「補助金のためにやってるだけだから適当でいいよ」なんて姿勢であれば誰もBCPで策定した計画を実行しないでしょうし、そもそもの趣旨に沿うものではありません。

ナブテスコさんなどの事例が紹介されていましたが、

従業員やその家族、取引先を守るためにどこまで本気になって取り組むのか

それがここで問われるのではないでしょうか。

実際に策定するために

ツラツラと紹介してきましたが、実際のところまだ始まって間もないので、

「どういう風に策定すればいいの?」というのが正直な現場の声みたいです。

その対策として、中小企業庁は以下の施策を実施しています。

  • ワークショップの開催
  • 専門家の派遣

この施策は中小企業庁と有限責任監査法人トーマツさんがタッグを組んで実施してますので、

興味のある方は有限責任監査法人トーマツさんのページより申し込みすることが可能です!

実際に策定してみることでよりイメージがわき、自社への適用もしやすくなると思いますので、非常にオススメのプログラムだと思います!

私も近いうちに、実際に策定してみようと思ってます!

今回紹介したような制度は「知ってるか、知らないか」で大きな差が生まれてしまいます。

このような情報は適時にキャッチアップして紹介するようにしますね!

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです!