【監査法人】主査をやるべきか。そのメリットはあるのか。

監査のお仕事

こんにちは、公認会計士・税理士の三橋裕樹です!

いきなりですが、私は監査法人に入所して1~2ヶ月した頃から同期によくこんな事を言ってました。

「主査やる前に絶対辞めてやる!」

今思えば色々とアレなんですが、監査法人出身の公認会計士の半数くらいはこういう気持ちになったことがあるのではないかと思ってます。

その要因は諸々あるとはおもいますが、私の場合は単純な理由。

あんなに監査法人がいつも忙しいだなんて思ってなかったからです。

(あとは恐ろしく仕事ができなかったというのもあります…笑)

「一年目のスタッフでさえこんなに忙しいのに、主査なんてやったら死ぬでしょ。」

「というか、うちの現場の主査、もう死にそう。」

他法人の同期に聞いてもこんな感じだったので、主査に魅力を全く感じなかったんですよね。

そんな私ですが、縁あって上場企業の主査に任命して頂き、結局のところ主査を経験してからの退職という形になりました。

そこで今回は、主査をやる必要はあるのか?という話をツラツラ書いていきます。

結論を先に話すと、本当に良い経験でした!

上場企業の主査を任されるまで

監査法人は面白い組織です。

特定のジョブにひたすら張り付く人もいれば、各現場をたらい回しにされる人もいます。

私の場合は完全に前者。

あまり知らない先輩からも

「ところで最近あの会社どう?」

みたいな話を振られるくらい張り付きでした。

私のように数個の監査クライアントにガッツリとアサインされているスタッフは、その現場における影響力がどうしても大きくなっていきます。

そんな状況が2~3年続いたので、副主査として現場をコントロールする機会がどんどん増えていきました。

「もう俺何でもやってるし、実質主査だよね?」

「正式な主査ではないけど、主査やってたって言えるよね?」

なんて大いなる勘違いをしていた時期です。生意気盛り…。

いずれ独立することを志してはいたので、「もうそろそろ辞めようと思ってます」みたいなことを話したりもしてました。

(今思うと、めっちゃ感じ悪いやつだな…)

ただ、そんな話を上司にしてみても

お前も主査を経験した方が良い。やってみればわかる。と口を揃えて言う。

自分が信頼している上司に至っては「主査になってから監査が楽しくなった」なんて言う始末。

え、本当に…?

半信半疑ではありましたが、独立するとなったら主査を経験することはできない訳です。

そんな中、縁あって主査に任命頂いたのでやってみることにしました。

主査最大のメリットとは

こうして主査として業務に携わることになったわけですが、

私の場合、クライアントからの相談対応がスタッフの頃とは比較にならないくらい増えたことが大きなメリットでした。

そもそも、スタッフの頃に私がイメージしていた主査業務は、以下のようなものです。

・日程調整
・スタッフの育成、管理
・監査計画の策定
・審査対応
・相談対応
・報酬見積りの作成

つまり、責任の重さはあれど私が主査になる前に携わっていた業務がそのまま継続するものと思っていました。

実際に主査として業務に携わってからも、上記で列挙した業務のほとんどは想定通りのものでした。

ただ、クライアントからの相談に対応する時間が圧倒的に増えました。

極端かも知れませんが、相談対応してたら一日終わった。なんてこともあるくらいです。

スタッフの頃は現場にいる時に質問を捌けば終わることが多かったのですが、

主査になった途端に現場外でも定時外でも相談電話・メールが雪崩のように押し寄せてくるようになりました。

それは経理部からであったり、内部監査室からであったり、監査役からであったり、取締役からであったり…。

(もちろんありがたいことです。)

上司に相談することもできますが、

スタッフの頃と同様に、まず相談の前提として自分が調べられる範囲まで調べる必要があります。

その過程で会計基準や関連書籍を漁る頻度が一気に増えます。

つまり、相談を受ければ受けるほど強制的にインプット・アウトプットの機会が増えるため、

公認会計士としてのスキルを高めるうえでとても良い機会を得られているなと感じました。

こうやって蓄積した知見はIPOの現場に携わった際にも重宝するので、この経験は貴重ですね。

また、独立すると事業主様とお打ち合わせする機会が一気に増えますので、主査として経営者ディスカッション・監査報告会の場などに参加していることで場慣れできたというおまけもあります。

主査最大のデメリットとは

逆に、主査最大デメリットを挙げるとするなら、

自分が担当するクライアントの業務に年中時間が取られることですね。

当たり前の話なんですが…。

これはメリットの裏返しでもありまして、

上場企業の場合、四半期決算に加えて内部統制もあります。

これに加えて、前述した相談対応も考慮するとあっという間に一年のスケジュールが終わってしまいます。

なので、もし監査法人を卒業して他のキャリアに進むことを検討している場合であっても、

早いうちから前もって動いておかないとまた一年、また一年と年を重ねてしまうことがよくあるようです。

「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないよう、自分のキャリアにおける優先度をしっかり考えておく必要がありますね。

主査をやらない選択肢もアリ!

個人的には主査として業務に携わることのメリットを感じていますが、

主査を経験せずに監査法人を退職することももちろんアリだと思います。

もともと主査をやらなくて良いと考えていたというのもありますが、個々人によってキャリアプランは大きくことなります。

上場企業・IPO準備企業のCFOとしてのキャリアに進むのであれば、

監査対応のイメージをつかむためにも主査をやった方が良いかも知れません。

はたまた、私のように独立する予定があった場合には、

一刻も早い独立をして、転びながら進むことがベストなのかも知れません。

ただ、絶対的な正解はないと思いますし、どの分野に進んだとしても新たに学ぶべき内容は山ほど出てきます。

私も退職の話をしたとき、「こいつはまだ早い」と仰る先輩方がいたようです。

それでも私は生きてますし、日々新たな経験ができているので独立して良かったと思っています。

「監査法人に入所したからにはとりあえず主査をやる」

という考えもアリだと思います。

何にせよキャリアの決定責任は自身にありますので、自分が正しいと思った通りに進むことが一番望ましい選択なのではないでしょうか。

周りの意見の中で取り入れるべきものを取り入れ、後悔のない選択をするようにしましょうね。