【公認会計士試験】公認会計士という肩書について、凡人会計士の考える現実的な話(その①)

公認会計士試験

こんにちは、公認会計士・税理士の三橋裕樹です!

新型コロナウイルス感染症の影響もありまして、

今年の公認会計士試験受験生は、例年とは比較にならないくらいストレスや不安を抱えているかと思います。

今後の進退を考えている方も多いかと思いますので、

私のような公認会計士という肩書(職業?)を持った凡人の現実的な話をします。

少し話が長くなりそうなので分割して書きます。

今回はその①。

※優秀な公認会計士を対象とした話じゃないので、ご了承ください。

「公認会計士は食いっぱぐれない」は本当か

結論を先に話すと、場所を選ばなければという前置きがあるものの概ね本当です。

 

公認会計士というのは、その名の通り会計の専門家であることを公認された肩書。

会計のプロとして上場企業の財務諸表を監査したり、

経理や業務プロセスにおいてミスや不正が発生しないよう企業の内部統制をチェックしたり、

M&Aにおいて買収企業の企業価値評価を行ったり、などなど

私のような若輩者には挙げきれないくらい潜在的な活動範囲は多岐に渡ります。

活躍できるフィールドが多いということは、その分仕事に困らないことの裏返しでもありますよね。

そのため、私が受験生の頃から「公認会計士はどんなに不況でも食いっぱぐれない」ということが言われていました。

恐らく何年も前から同じことが言われているでしょうし、今も言われているのかも知れません。

 

これに対し、公認会計士という肩書を手にして独立開業している身として、

正直に感じているのは以下のことです。

  • 多岐に渡り活躍できる人は少ない
  • 監査法人への出戻りが少なくない
  • 実力がそこまで無くても監査法人での給料は増えていく
  • 独立開業しても会計士業だけでは食えず税務転向するケースが多い(私もそうです)
  • 公認会計士という存在に対するニーズが想像より少ない(多くの企業は税務面が何より大事)

良くも悪くも凡人レベルの公認会計士は監査法人という組織に守られている存在だと強く思います。

正直私もそうです。

 

ほぼ全ての公認会計士試験合格者は、会計士人生のファーストキャリアとして監査法人に進みます。

名の知れた監査法人は基本的にどこも給与待遇が良いので、

1年目の頃から額面で30万円程度の給料が約束され、

公認会計士という肩書を手にすると(残業は相当程度ありますが)毎月手取りで40万円程度の給料を得ることができます。

福利厚生は期待できないし、海外ファームに比べると決して高くはないんでしょうが、

それでも国内においては平均以上の年収です。

 

ですので、一度転職したけど思うようなキャリアを描けず監査法人に戻ってくるというケースは多いです。

出戻りに優しいのが監査法人の良いところ。

喧嘩別れによる退職等でなければ、昔在籍していた監査法人に戻ることはそう難しいことではありません。

大手監査法人の採用人数が減ってきてるという話も少しずつ出ていますが、

監査難民(監査法人と契約したくてもできない企業)は増えている印象があり、業界全体としてはまだまだ人出不足感が否めません。

「AIの導入で仕事がなくなる!」

なんて言われていますが、未だに紙面で監査調書を作成している監査法人もありますので、

究極的には法人を選ばなければ監査法人という働き先に困ることはないと思います。

監査法人の外に出て活躍できるのか?

公認会計士の監査法人に属している時の収入が安定している話を書きました。

ただこれは監査法人という組織の話。

外に出ると話は違います。

 

監査法人から転職して組織内会計士として働く際、

監査法人の頃と同程度の給料に見合うパフォーマンスを発揮できるとは限りません。

当たり前と言えば当たり前。

資料をチェックできることと、資料を作成できることはイコールではありませんし、

事業会社ならではの根回しが必要とされ、”先生”として特別扱いされることもありません。

むしろ「公認会計士のくせに仕事できないんだね」なんて言われることすらあるんじゃないでしょうか。

また、経理的な処理はもちろん税務面、財務面での知識やサポートも当然に求められます。

(私は事業会社に就職したことがないので詳細不明ですが…)

そもそも、監査法人に3年程度在籍していても、年間業務の9割は監査だったりします。

監査そのものを内部職員に求める企業はないので、”監査士”のような存在では活躍することは難しいです。

 

逆に企業側の視点で考えてみると分かりやすいかもしれません。

年収600万円~800万円も払うのであれば、

  • 一通りの業務は問題なくこなせる(即戦力)
  • 責任者として部署を統括

こういう人材が欲しいでしょう。

年収は言い換えれば企業が求めるスキルレべルなので、

その能力が自分にあるのか?ということは考えてみる必要があります。

 

またIPOを志すベンチャー企業に転職した諸先輩方も多いようですが、

「社長と合わなくて意見も聞いてもらえないし、思うように仕事を進められなかった」

「経理部長というより何でも屋という感じで寝る時間が無かった」

「社内管理体制がぐちゃぐちゃでIPOを目指すフェーズにはほど遠かった」

こういった理由で1年内に再転職したり、監査法人に出戻りする人が少なくないようです。

(IPO支援業務のクライアントに公認会計士がいても、数ヶ月後に消えていることが珍しくないです。)

 

もちろん若くして監査法人から転職し、

CFOとしてベンチャー企業を見事上場させた先輩もいますし、

上場企業の組織内会計士としてバリバリ活躍している後輩もいます。

ただこれは、「公認会計士だから」ではありません。

その人が優秀であったり、ストイックに仕事に打ち込めるからです。

転職サイトを見てみると、公認会計士という肩書を入れるだけで条件の良さそうなオファーが並びますが、

自分の能力や貢献度なくしては長く仕事を続けることはできません。

法的独占業務の力は偉大!

ちょっと暗い話になってしまいましたが、公認会計士による財務諸表監査は法的な独占業務であり、

ズバ抜けて優秀という訳ではない公認会計士にとっては何よりの強みだと思います。

「監査だけに頼るなんて甘え」

みたいな事を言う人もいるかも知れませんが、法定な独占業務を得るための試験に合格してるわけですし、

監査する人がいなければ監査制度は崩壊し、株式市場の信頼度を担保することができなくなります。

本来的にはとても意義のあるお仕事です。

(軽視されていることは否めませんが…。)

 

私も気付くのが遅くなってしまいましたが、監査という日々の業務の中でも、

「なるほど、こういう資料を作れば良いのか」

「役会ではこういう事が議論されているのか」

「ミスが起きないようにこういう業務フローを組めばいいのか」

「なんでこのタイミングで資金調達したんだろう?」

「現金預金は運転資金何ヶ月分あるんだろう?」

といった感じで好奇心を働かせれば学べることは多くあります。

こういった視点を持てるかどうかが今後公認会計士としてのキャリアを広げていくために必要なんでしょうね。

(監査法人の説明会の時に「好奇心を持ってビジネスを理解してほしい」と散々言われたのを忘れていました)

 

また、公認会計士試験に合格するということは、

それだけ勉強に意識を傾けることができるということでもあります。

私の同期も勉強家が多いですし、そういう人に囲まれた環境で過ごせば学べる機会が自ずと増えます。

 

実務で言うと、本業をしっかりこなすことが大前提ですが、

年次が上がり仕事をコントロールできるようになるにつれて、

会社の方にビジネスのお話を聞いてみたり、

ちょっと雑談ベースで日々のお悩みを聞いてみると意外な発見があるかも知れません。

工場往査の際に自社商品の強みとか聞くと結構面白いですよ!

他にも商品ライフサイクルの話とか、自社がPPM上どこに位置するのか、など

経営学で学んだことが実際に現場で活かされていることをみるとちょっと嬉しくなります。

(迷惑かけちゃダメですが!)

 

公認会計士試験であれだけの科目数を勉強する必要があるということは、

実務においてそれだけの知識やスキルが求められるということです。

試験に合格した後に「はい、忘れた!」というのはダメで、

その知識を実務で上手く生かすことが公認会計士としてのキャリアを広げていくうえで重要なんだと

凡人会計士は今更考えてます。

潜在的には本当に魅力のある職業ですが、

専門家である以上学び続けることが求められるのは仕方ないことであり、

楽な仕事ではないことを受験生には改めて知っておいて欲しいなと思います。

 

なんてツラツラ書いていたら結構なボリュームになってしまったのでここで切ります。

長文かつ駄文をお読みいただきありがとうございました!

その②では開業話とかをできればなーと考えてます。