融資を検討している場合に気を付けるべき決算書のポイント

融資・経営支援

黒字倒産という言葉があるとおり、企業においては利益が黒字であること以上にキャッシュの有無が大切です。

非常時に困らないよう、余裕があるうちに融資を受けておくことが望ましいですが、こちらの想定通りに融資を受けることができるとは限りません。

過度な節税は首を絞める

税金は多くの経営者に忌み嫌われています。

「できることなら1円でも少なく済ませたい!」

そんな気持ちから必要以上に経費を積み増すなんてことも少なくないでしょう。

節税により税負担を減らすこと自体は悪いことではありませんが、、融資を受けることを検討しているのであれば過度な節税は避けるべきです。

基礎的な話になりますが、法人税は所得(税務上の利益)に対して課されるため、所得が少なければ少ないほど税金が少なくなります。また、申告書上の利益はある程度、決算書の利益に

つまり、所得を減らせば減らすほど申告書上の所得は0(もしくはマイナス)に近づきますので、金融機関側は「全然稼げていない」という印象を持ちます。

 

ここで考えてみて頂きたいのですが、

自分が金融業を営んでいるとして、特段の事情が無いなら赤字の会社に融資したくないですよね…?

金融機関だって同じ考えです。

取引件数等のノルマがあったとしても、担当者が「リスク高そうだし融資したくないな…」と思う案件を受けることは自分のクビを締めるだけですので決裁者に通すハズがありません…。

事業活動を継続・拡大するうえで必要となる経費・投資を抑制することは避けなくてはなりませんが、少なくとも「今後も利益を出せそうだし、滞りなく返済してくれそうだな」と思わせるような決算書・申告書にしなくてはなりません。

気を付けるべき決算書のポイント

企業の実態はそれぞれ異なりますが、会計のことを深く知らなくても対象しやすい決算書のポイントがいくつかあります。

売上総利益はプラスか

これは一番分かりやすい話ですが、何よりも大事。

売上総利益がマイナスというとは、100円で買ってきたものを90円で売っているような状況ということ。非常にマズイです。

この状態に陥っているような場合には資金繰りもかなり厳しいとは思いますが、確実に売却価値が見込める担保物が無い限り金融機関に飛び込んでも対応してくれないので、一度ビジネスモデルの再検討を行いましょう…。

営業利益はプラスか

これは意外とあります。

例えば、某バーコード決済アプリのように多額の広告宣伝費を投入することで一気にシェアを獲得するような場合には、販管費が大きく膨らんでしまいます。

あれほど極端なことをしないとしても、交際費、消耗品費、福利厚生費、役員報酬等により稼いだ利益が圧迫されるのはよくある話です。ただ、融資を受けるのであればやはり黒字であることに越したことはありません。

なお、損益計算書上には他に経常利益、税引前当期純利益、当期純利益とありますが、こちらも赤字より黒字の方が印象が良いのは言うまでもありません。

純資産額が資本金を下回っていないか

純資産額が資本金を下回るということは、過去の赤字累計を解消できるほどの利益を積み上げられていないということです。

この解決法は詰まるところ、当期純利益を黒字にすること以外ありません。

ただ、開業してから数年間は赤字続きというのも珍しくない話ですので、少なくとも融資申込時に提出することになるであろう直近3期分の決算書を並べてみた時に、黒字転換している(or赤字が大きく0に向かっている)ことが望ましいです。

長期間滞留したままの勘定科目はないか

よくあるのが役員貸付金です。

これが残ったままですと、「この会社は企業の利益を社長個人が浪費する」という印象を与えてしまいますので、なるべく早く解消しましょう。

他にも、入金見込のない売掛金等が何年も残っている、なんてことにも気を付けましょう。

現預金はある程度あるか

金融機関は極力リスクを負わないために、非常時に融資することを避けたい本音があります。

そのため、運転資金(単月分の売上高くらい)数か月分くらいの現預金がある状態で融資にトライした方が印象は良いです。

減価償却費+当期純利益は返済額以上か

企業が稼いだ利益のうち、どれくらい自由に使えるお金があるかを示す指標としてFCF(フリー・キャッシュ・フロー)というものがあります。

厳密な計算式とは違いますが、より簡易的な計算として

当期純利益+減価償却費(※)

この金額が月々の返済額*12ヶ月分以上あるのであれば、返済が滞ることはないだろうという概ねの想定はつきます。

※減価償却費はその年の費用ですが、分割返済等でなければ過年度に代金を支払済みですよね。そのため、キャッシュの有無を示すFCFを算定するうえではプラス調整をします。このような、その年に支出を伴わないものの費用に計上される項目のことを非資金取引といいます。(参考までに。)

預り金に滞留はないか 法定福利費は著しく低くないか

資金が厳しい企業が後回しにしがちなのが社会保険料の支払いです。

そのため、預り金があまりにも積みあがっていたら、融資をしたとしても社会保険料の支払いに充当される可能性があり、印象が非常に悪いです。

同じような話ですが、人件費に対して法定福利費が著しく低い場合、社会保険料が適切に計上されていない(利益操作)されている可能性があるため、こちらも悪い印象を与えかねません。

換金価値のある資産はあるか

融資後に企業の財政状態が悪化した場合であっても、十分な換金価値のある資産を保有していればそれを売却することで返済が可能ですよね。

そのため、固定資産税評価の高い土地を保有している、時価の高い有価証券を保有している、ということは金融機関にとってはプラス材料となります。

本格的に融資を申し込む前から相談を

これは時間的に余裕がある場合の話ですが、予め自社の資金繰りを把握して、今後融資を受ける必要があると感じた場合にはメインバンクの担当者に予め相談してみることをオススメします。

その際には、過去の数値がどうなっていて今現在の数値がどうなのか説明できるよう、試算表を持参できるようにしておくことがベストですね。

 

 

◆余談

本日、初めて降りた駅でバスに乗りましたが、駅からバス停までの案内がほとんどなく、雨の中ダッシュしてしまいました…。マスクと湿度のダブルコンボで汗だくです。

大型の書店に行きました。目的の書籍はなかったのですが、数冊立ち読みしただけでも収穫があったので良かったです。