会社の潰れにくさを分析するうえで覚えておきたい財務諸表の指標

融資・経営支援

こんにちは、公認会計士・税理士の三橋裕樹です!

財務諸表を見るうえで儲かっていること以上に大事なのが財務の安全性です。

今回は自分の会社がどれだけ安全(=潰れにくい)かを把握するための指標を紹介します!

現預金の減少スピード

企業において何よりも大事なのはキャッシュです。

利益が赤字でもお金が残っていれば事業を継続することができます。

そのため、現預金(手元現金や預金口座に残っているお金)が過去数年間からの推移で見た場合に増えているのか減っているのかを把握することがまず大事です。

過去3年間の決算書と直近の試算表を並べてみて、現預金が右肩上がりに増えているのであればひとまずは安全。

逆に右肩下がりに現預金が減っているのであればかなり危険です。

たとえば、

3年前:100万円

2年前:80万円

1年前:60万円

このように推移している場合、毎年20万円ずつ現預金が減っているので、

今後も同じような状況が続けば3年以内に資金ショートを起こすことが分かりますよね…。

実際にはそれを防ぐために早い段階で融資を受けたり、事業構造の改革を起こすことになるかとは思いますが、この数字を把握するタイミングが遅れれば遅れるほど取れる改善策も少なくなります。

他の財務諸表の数字が読めなくても、現預金の推移は毎月・毎年確認するようにしましょう!

当座比率

現預金をたくさん保有していても、多額の融資がある場合には返済能力の有無も気になるところですよね。

そこで使える指標が当座比率です!

当座比率 = (現預金 + 売上債権 ) ÷ 流動負債

一般的には当座比率が100%以上あるようなら、一年以内に支出が生じる債務を払えるだけの財務的な安全性があるものとみなされます。

逆に当座比率が100%未満の場合、一年以内に支出が生じる債務を払えるだけの安全性がないということです。

また、あくまで目安程度ではありますが、

当座比率に12を乗じることで、利益が上がらない状態であと何ヶ月会社が耐えられるのかを計算することもできます。

(例 80% * 12 = 9.6ヶ月)

そのため、現預金の減少スピードと同じように常日頃から当座比率に目を向けておくことで早い段階から融資の要否等を検討しておくようにしましょう!

今後キャッシュを増やすために必要となる売上

キャッシュを増やしていくために必要となる売上高が知りたいという場合の指標も紹介します。

まず前提として、現預金がどれくらい増減するかは、以下の式で簡便的に計算することができます。

現預金の純増減額 = 税引後利益 + 減価償却費 - 借入金元本の年間返済額

例えば、以下のような場合であれば

  • 税引後利益が100
  • 減価償却費が50
  • 借入金元本の年間返済額が80

70だけ現預金が増加することになりますよね。

 

これを踏まえて「現預金を〇円増やしたい!」という場合にいくら売上を上げれば良いのか計算してみましょう。

  • 売上高純利益率が5%
  • 現預金を200増やしたい
  • 固定資産、元本返済額は変わらず

このような場合、式は以下のとおりです。

200 = X*5% + 50 ー 80

その結果、200だけ現預金を増やすのであれば4,600の売上が必要ということになります。

明確に達成すべき売上目標を示すことができれば、その売上を構成要素ごとに分解することができ、対策を打ちやすくなります。

現預金を効率的に増やしていくためにも積極的にこの計算式を活用するようにしましょう!

(参考)税金に対する意識を図る指標

これは参考ですが、会社(≒経営者)の税金に対する意識を図る指標というのもあります。

それは、貸借対照表の利益剰余金を事業年数で割る(一年当たり利益剰余金)というもの。

利益剰余金は、(配当を除けば)開業から今に至るまでの利益・損失が累積されるハコですよね。

また、多くの経営者は税金を払いたくないという意識が強く、節税して利益を圧縮する傾向があります。

つまり会社を創業してしばらく経つのに、一年当たり利益剰余金が売上と比較してとても低いようであれば「節税に意識が行き過ぎている人」ということです。

会社であっても個人事業であっても、分かりやすく節税するためにはお金を使うしかありません。

(以下の記事参照)

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ムダに税金を払いたくないがために会社の安全性を損なうのは本末転倒ですので、実際に経営が苦しくなる前に会社としての傾向を知っておくようにしましょう!

 

◆編集後記

今日は実家までドライブしていました。愛犬を初めて茅ヶ崎の海岸に連れていくことができたので良かったです。

また、祖母の体調が良かったため、車イスを押して最寄の神社にお参りを。あと何回できるか分かりませんが、また機会を見つけて行きたいと思います。